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トピックス : WEBサーバー監視サービスF-PAT【ファイルパトロール】

2025年10月2日(木)

データベースセキュリティと対策:攻撃から守るために必要なこと

現代のWebサイトは、裏側でデータベースが稼働し、動的にコンテンツを生成して情報を提供する仕組みが一般的になっています。会員情報、商品データ、予約情報、決済履歴など、企業やサービスの中心を支えるのがデータベースです。そのため、攻撃や改ざんの標的となりやすく、セキュリティ対策を怠れば重大な被害を招く可能性があります。ここでは「データベース」「セキュリティ」「対策」をキーワードに、よくある攻撃や改ざんの手口、そして基本的な守り方を、初心者でも理解しやすい形で整理します。

データベースへの代表的な攻撃手法

以下では、データベースが狙われる代表的な攻撃の種類を、具体例を交えて分かりやすく説明します。知っておくと対策の優先度が見えてきます。

1. SQLインジェクション

最も有名な攻撃手法です。サイトの入力フォームやURLに不正な命令文を紛れ込ませ、データベースに意図しない動作をさせるものです。これによって会員情報を盗まれたり、データを勝手に書き換えられる被害が発生します。たとえば「ログイン画面に特定の文字列を入れると、パスワードを知らなくてもログインできてしまう」といった現象がこれにあたります。システムの設計が甘いと、攻撃者は大量の個人情報を一度に持ち出すことができてしまいます。

2. 権限の悪用

データベースには「一般利用者」「管理者」など権限のレベルがあります。設定が甘いと、攻撃者が一般利用者の立場から管理者の権限を奪い、全データを自由に操作できるようになるケースがあります。たとえば、ユーザーが自分の注文履歴しか見られないはずなのに、他人の履歴まで閲覧できてしまう場合、それは権限管理が破られた例です。権限の悪用が成功すると、システム全体の信頼性が崩れてしまいます。

3. ランサム攻撃

データベースの中身をすべて暗号化し、「元に戻したければ金を払え」と迫る手口です。バックアップが不十分な場合、業務が完全に止まり、事業そのものに大きなダメージが出ます。特に近年は標的型ランサム攻撃が増えており、「単なるデータ暗号化」だけでなく、「盗んだデータを公開すると脅迫する」ケースも見られます。情報漏えいと業務停止の両面から打撃を受けるのです。

データベースへの攻撃とデータ改ざん

攻撃を受けた結果としてよく起こるのが「改ざん」です。これは単なる数字の書き換えにとどまらず、サービスや企業の信用を大きく損ないます。代表的な例は次の通りです。

価格や在庫数の書き換え

ネットショップの商品価格を1円に書き換えられるなど、不正な取引に直結します。短時間に大量の変更が行われると、金銭的な損害だけでなく、信用失墜も避けられません。

ページ内容の書き換え

トップページやニュース記事が攻撃者のメッセージに差し替えられるケースです。単なる「いたずら」ではなく、フィッシングサイトへ誘導されたり、ブランドイメージが傷ついたりします。被害後は「いつから改ざんされていたのか」が問題となり、調査と修復に長い時間がかかります。

画像の差し替え

商品画像やバナーが不正に置き換えられ、利用者が誤解したり詐欺に誘導されることがあります。見た目は小さな違いでも、利用者からの信頼は大きく損なわれます。

ユーザー情報の変更

登録メールアドレスを勝手に変更されると、本人がログインできなくなったり、なりすましに悪用されたりします。これにより利用者からのクレームが相次ぎ、カスタマーサポートの負担も急増します。

検索結果の汚染(SEO改ざん)

検索結果に表示される内容を操作され、利用者が不正サイトに誘導されるケースです。ブランド名で検索したユーザーが、実際にはフィッシングサイトへ飛ばされるといった被害が出ています。

こうした改ざんは、発覚すればすぐに大きなニュースになり、修正や信用回復には時間とコストがかかります。つまり「目立つ被害」であるだけに、特に注意すべき分野です。

データベースセキュリティ対策の基本

専門的な知識がなくても、次のようなポイントを意識するだけで大きな防御力を得られます。

1. 入力チェックを徹底する

ユーザーが入力する値をそのまま処理しないことが重要です。入力の内容をきちんと確認する仕組みを使うことで、SQLインジェクションを防げます。最近では多くの開発ツールが入力チェックを簡単に取り入れられるようになっています。

2. 権限は必要最小限にする

データベースにアクセスできるアカウントは「見るだけの人」「編集できる人」など用途に応じて権限を分け、必要以上の権限は与えないようにします。特にWebサイトが利用するアカウントに「管理者権限」を与えてはいけません。

3. アクセスを制限する

管理画面やデータベースには誰でも入れるようにせず、特定のIPからのみ接続可能にしたり、VPNを経由するようにしたりと入口を絞ることが効果的です。最近は「多要素認証(MFA)」を必須にする企業も増えています。

4. パスワードや個人情報は暗号化する

ユーザーのパスワードを平文で保存してはいけません。強力なハッシュ化方式を使うことが最低限の対策になります。個人情報についても、必要に応じて暗号化して保存すべきです。

5. ログを監視する

不自然なアクセスや操作が行われていないか、ログを記録して定期的に確認する仕組みを取り入れましょう。大きな異常があれば即座に気づけます。ログは「誰がいつ何をしたか」を把握できる大切な証拠にもなります。

6. 定期的なアップデート

古いソフトウェアをそのままにすると、既知の脆弱性を突かれて攻撃されます。システムやデータベースは常に最新の状態に保つことが重要です。

役立つサービス・ツール

ここでは、実際に対策を進める際に役立つ代表的なサービスやツールを分かりやすく紹介します。導入の手間や効果のイメージをつかむ助けになります。

WAF(Webアプリケーションファイアウォール)

SQLインジェクションなど代表的な攻撃を自動的に遮断してくれる仕組みです。クラウド型のサービス(AWS WAF、Cloudflare WAFなど)なら導入も比較的簡単です。

監査・診断サービス

データベースの脆弱性診断や、アクセス状況を監査するサービスがあります。専門のツールを使えば「どこが危ないのか」を客観的に把握できます。

暗号化サービス

クラウドのデータベースには標準で暗号化機能が付いているものが多く、設定しておくだけでセキュリティを強化できます。

バックアップサービス

定期的な自動バックアップを設定しておけば、ランサム攻撃や障害時にも復旧が可能になります。バックアップは「同じ場所に置く」のではなく、異なる環境に保存しておくことが安心です。

まとめ

データベースは、企業やサービスにとって最も大切な資産のひとつであり、攻撃者にとっても格好の標的です。SQLインジェクションや権限悪用、ランサム攻撃などのリスクを理解し、改ざんによる被害を防ぐには、基本的なルール(入力チェック、権限の最小化、暗号化、ログ監視、アップデート)を守ることが大切です。さらにWAFや監査サービス、バックアップなどの仕組みを組み合わせれば、より安心な環境を築けます。

最近では「ゼロトラスト」という考え方が広がっています。これは「内部のアクセスだから安全」とは考えず、常にすべてのアクセスを検証し続けるという発想です。また、AIを使って「普段と違う挙動」を検知する仕組みも普及しており、今後は自動的に不正を見抜く仕組みが主流になっていくでしょう。

「データベースのセキュリティって何?」と調べている段階でも、まずは基礎的な対策から着手することが、最も効果的で確実な第一歩です。その上で、サービスや企業の規模に応じて先進的な仕組みを取り入れれば、攻撃者に狙われても被害を最小限に抑えることができます。